第5戦
SUPERBIKE RACE
in SUZUKA
高橋裕紀が試練を乗り越え
初代ST1000チャンピオンに輝く!

2020年10月31日(土)
公式予選 天候:快晴 コース:ドライ
2020年11月1日(日)
決勝 天候:快晴 コース:ドライ
三重県・鈴鹿サーキット(1周5.821km)
観客動員数 21,500人(2日間合計)

STORY

 全日本ロードレース選手権シリーズは、ついに最終戦を三重県・鈴鹿サーキットで迎えた。コロナ禍の中、8月に開幕し、実質4戦という短期決戦で争われることになった2020年シーズン。ST1000クラスでシリーズランキングをリードしている高橋裕紀は、暫定ランキング2番手の名越選手が優勝しても20位以内でゴールすれば王座獲得となる有利な状況で最終戦を迎えていた。しかし、高橋は左手を包帯で巻いた姿でサーキットに現れる。レースウイークに入る直前のトレーニングで転倒し、左手首のしゅうじょう骨と肋骨3本にヒビを入れるケガを負ってしまっていたのだ。どれだけ走れるか分からないが、とにかく乗ってみてから判断するしかなかった。実際に木曜日から乗り始めると、最初のセッションでは手負いの状態ながらトップタイムをマークして見せる。しかし、実際は予想以上の痛みと左手を思うように使えない影響があった。木曜、金曜と左手に負担をかけないためのマシンセットを進めて行ったが、日に日に疲労がたまり痛みも増していた。
 一方、ST600クラスの小山は、暫定ランキング2番手につけていたが、開幕戦のマシントラブルが響き、タイトル防衛は厳しい状況となっていたが、いつも通り勝つことを、自分自身の限界を超えることを考えて臨んでいた。
 今回の最終戦は天候に恵まれ、木曜日の特別スポーツ走行から日曜日のレースまで、すべてドライコンディションで行われた。気温も20度前後とエンジンにとってもちょうどよく、新型CBR1000RR-Rは、300km/hオーバーを記録。ST600でも、よくマシンが走っていた。
 土曜日の公式予選では、高橋は、ケガの状態を鑑み、早めに切り上げることも考えたが決勝を見据えて、なるべく負担がかからない走りを模索しながら最後にアタックし3番手グリッドを確保。小山は、木、金と仕上げて来たセットに手応えを感じており、タイヤのいい状態でアタックを開始する。するとデグナーカーブで他のライダーに引っかかったにも関わらず2分11秒7が出ていた。これは、2分10秒台も夢ではないと、さらに攻めて行く。しかし、MCシケインで左に切り返したところで転倒を喫してしまう。タイムを出せなかったのは残念だったが、マシンのフィーリングもよく、攻めた結果。納得の転倒だったこともあり、レースに向けて自信を深めていた。
 そして運命の日曜日を迎える。ST600クラスは、2度赤旗の出る大荒れのレースとなった。最初の赤旗が出たのは4周目。

残り7周のレース2がスタートすると、小山は、鈴鹿をホームコースとする若手ライダーを警戒しながら、ポジションをキープ。トップは追えなかったが2位争いを展開。この集団のトップでゴールすることを目的に切り換え、残り2周で上がって行こうとしていた。その予定通り6周目の1コーナーで岡本選手をかわし、4番手に浮上していたのだが、その周に赤旗が出てしまい、レース2の5周終了時の順位で成立することになり、5位という結果で最終戦を終えた。
 お昼のインターバルをはさみ、ST1000クラスのレースを迎える。全車が整列しシグナルレッドが点灯するが、ブラックアウトまでの時間が長く、左手の握力がない高橋は、クラッチを握っていることができず僅かに動いてしまう。
 レースが始まると2番手で1コーナーに入ると、3コーナーの進入でトップに浮上する。続くデグナーカーブの進入では、名越選手が強引にインに入ってくる。これを察知した高橋は、何とか接触を回避。続くデグナーカーブ2個目で津田選手にかわされ3番手にポジションダウン。オープニングラップの混戦の中、高橋は、ペナルティが提示されたら、すぐにピットに向かおうとフラッグが提示される各ポストをチェックしていた。そして2周目も半分を終えようかというところで高橋にジャンプスタートのペナルティが出される。これを見た高橋は、速やかにピットロードに向かい、ライドスルーペナルティを消化。再びコースに戻って行くが最後尾の30番手に落ちてしまう。この時点でトップを走るのは、逆転の可能性のある名越選手であり、すでに独走体制に入っていた。20位以内にならなければチャンピオンになることはできない。
 まさかの展開になってしまった高橋は、痛む身体で全力の走りを見せ、前を行くライダーを追う。3周目に27番手、4周目に23番手、5周目には21番手まで追い上げると、6周目には、ついに20番手となり条件クリアとなる。この時点で高橋は、サインボードで「OK」と出ると思っていたが、サインエリアもパニックになっており、スタッフは「OK」という意味で親指を立ててサムアップしていたが、高橋には、拳に見え「まだ行け!」という意味に見えてしまっていた。結局、高橋は16位まで追い上げてゴール。2コーナーでチャンピオンフラッグを受け取るまで、タイトルが獲れたことを確信できていなかった。チャンピオンフラッグを持ちながら、クールダウンラップを終えるとチームの待つパルクフェルメで喜びを爆発させたのだった。

小山知良コメント

「決勝で2回も赤旗になり、最後まで走れずに不完全燃焼でしたが、これもレース。最終戦は、本当に気持ちよく走ることができていましたし、まだまだ速く走ることができる手応えがありました。コロナ禍の中、4戦という短いシーズンで難しかったですし、開幕戦でトラブルが出てしまったことが大きく響きました。これからは、今以上に勝って行かなくてはいけないとあらためて思いました。もちろん今までも毎戦勝つ気持ちで走っていましたが、気持ちではなく、実際に勝たなくてはいけないですね。そのためにもっと勝てるバイクに仕上げて行こうと思っています」

高橋裕紀コメント

「本当にホッとしています。初代チャンピオンというのは大事ですし、Honda CBR1000RR-Rのデビューイヤーでタイトルを獲ることも意識していましたし、実現できてよかったです。人生初のジャンプスタートを、この大一番でやってしまい本当に申し訳ありませんでした。冷静に考えれば対策できていたはずなんですが…。これも日本郵便、Honda、応援してくださった皆さんのおかげです。そして支えてくれたチームに感謝いたします。ありがとうございました」

手島雄介代表コメント

「まずは今シーズン、コロナの影響で不安な状況下の中でもご支援いただきました日本郵便さま 、Honda Dream様、NTTコミュニケーションズ様をはじめ、多くのスポンサーさまとご支援者の方に無事にシーズンを終えられました事を深く御礼申し上げます。
結果としましては、当初の掲げておりました2連覇2階級制覇を達成できず申し訳ござませんでした。しかし、チームや選手の頑張りでST600クラスで小山選手がランキング3位、ST1000クラスで高橋選手が新設クラスの初代チャンピオンを獲得し、日本郵便Honda Dreamとしましては2年連続の全日本チャンピオンを獲得することが出来ました。これも皆様の応援の賜物で御座います。冒頭にもある通り今シーズンはコロナの影響でレースが開催されるのかもわからない中で不安と無力さを痛感するところからシーズンが始まったように感じてます。
そんな中でもレースが開催され少しでも明るい話題を待ち続けて頂いた皆様に感謝しかありません。
人と同じ方向を一緒に見て、笑顔で会える貴重さと幸せを噛みしめております。色んな立場の方々が一つになって初めてモータースポーツのエンターテイメントになることを再認識した今、我々の出来ることで少しでも世の中にお役に立てる活動に一層の熱を加え邁進して参りたいと思います。最後に日本郵便Honda Dreamへご協力頂きました全ての皆様、有難う御座いました。
そして我々からもチャンピオン獲得のお祝いを申し上げます。おめでとうございます。これからもどうぞ宜しくお願い申し上げます。」

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