ついにシリーズ最終戦を迎えた全日本ロードレース選手権。2019年シーズンも小山知良は、全日本ST600クラスのポイントリーダーとして、その舞台となる三重県・鈴鹿サーキットにやって来た。昨年は、まさかのアクシデントでチャンピオンを逃した小山。アジアロードレース選手権SS600クラス、AP250クラスとランキング2位が続き、昨年はタイトル獲得を見据えた戦いをしたが、結果的にチャンピオンを獲ることができなかった。これを受けて小山は、一切タイトルを考えることを止め、とにかく全力で走ることだけを考えることに決めていた。もちろんタイトルに王手をかけた最終戦も、そのスタイルを変えることはなく、それを手島監督とチーフメカニックの澁田も了承していた。一方、國峰は、今シーズン、今ひとつ波に乗れないでいた。今回も初日から、タイムが出ず苦戦しつつも、日を追う毎にセットを詰めて行く。岩田は、ベテランらしく、これまでに積み重ねてきたことを、鈴鹿に当てはめ初日は6番手につけ、その後も着実にタイムを縮めて行った。
土曜日に行われた公式予選は、30分間で争われた。各ライダーは、タイヤのグリップのあるうちにタイムを出して行く。國峰と岩田は、計測2周目に2分12秒台に入れると、小山は計測4周目に2分11秒台に入れて来る。小山は、3番手となりフロントロウを確保。國峰は5番手でセカンドロウ。セッション終盤にタイムアップしたライダーもいたため岩田はポジションを落とすものの10番手となっていた。
多くの観客が見守る中、13周先のゴールを目指しレースはスタートした。ホールショットは、南本選手が奪い、小山は2番手、タイトルを争う岡本選手が、その背後につけていた。この週末、好アベレージを刻んでいた南本選手が予想通りレースをリード。
これを小山、タイトルを争う岡本選手、そして古山選手が追う。序盤は、古山選手のペースが速く、岡本選手をかわすと小山もかわされ3番手に後退する。後方では、岩田が5番手につけていたが、荒川選手にかわされると徐々に遅れ、その背後に國峰と長尾選手が迫り、三つ巴の6番手争いを繰り広げていた。
レースも折り返しを過ぎた8周目。デグナーカーブ進入で古山選手をかわした小山は2番手に上がるが、9周目のホームストレートで抜き返される。しかし古山選手のペースが上がらないため、早くパスしてトップの南本選手を追いたいところ。小山は、10周目のS字コーナー入口でパスし2番手に上がると南本選手追撃に入る。そして残り2周を切った12周目。デグナーカーブで岡本選手が転倒してしまう。この時点で小山のシリーズチャンピオンは、ほぼ決定だったが、小山は全力の走行を続け南本選手のテールに迫って行く。
そして最終ラップを迎える。南本選手をピタリとマークした小山は、スプーンカーブの進入で前に出て、このレースで初めてトップに立つ。バックストレートでは、予想以上に早く抜き返されてしまい万事休す。2位でチェッカーフラッグを受け、見事にシリーズチャンピオンを獲得した。
國峰を先頭とする三つ巴のバトルは、岡本選手が転倒したため、5位争いとなっていた。最終ラップの1コーナーで長尾選手が岩田をかわすが、イン側のラインを取った岩田が國峰に接触し両者は転倒。これに長尾選手も巻き込まれ3台ともリタイアとなるアクシデントが発生。岩田はミスを認め2人に謝罪。残念な最終戦となってしまった。
小山知良コメント
「日本郵便さんを始め、各スポンサーさん、ファンの皆さん、今シーズンも多くのサポート・応援をしていただき本当にありがとうございました。おかげさまで19年振りにチャンピオンの称号を手に入れることができました。これまで幾度となくタイトルに届かずランキング2位と悔しい思いをしてきました。ちょうど一年前もタイトルを意識した走りをした結果、チャンピオンになることができませんでした。今年は、負けたら終わりではなく、辞めたら終わりなんだと自分に言い聞かせ、リスクを負ってでも全力でプッシュし続けると決めてシーズンを戦ってきました。今回の最終戦も最後まで優勝を目指して全力で攻めましたが、あと一歩及ばず2位でした。これは、まだまだ成長しなければいけないと言うことだと思いますし、もっと強い選手になれるように精進して行きます。これからも応援よろしくお願いいたします」
國峰啄磨コメント
「初日、2日目となかなかマシンセットが、いい方向に行かず、2日目の2本目で岩田選手の後ろにつかせてもらい調子が上がって来たのですが9番手でトップとも差がありました。序盤2戦は、思うように走ることができないでいましたが、今年のタイヤに合わせたセットを行うようにしたところ、よくなってきていました。今回も今シーズンの傾向を見ながらセットをしたのですが、うまくハマりませんでした。一番は、自分自身がうまく乗れなかったことだと思います。うまく乗れていればトップグループを走れたと思いますし、あのポジションにいたことが悪かったですね。今シーズンはいい流れをつかめなかったので、来年は、この経験を生かして、もっと速く走ることができるようにしたいですね。2019年シーズンもありがとうございました」
岩田悟コメント
「まずは、自分の不注意で転倒させてしまった長尾選手、國峰選手にお詫びいたします。申し訳ありませんでした。今回は前戦オートポリスまでにやってきたことを初日の路面状況に合わせてアジャストして、いいフィーリングで乗ることができていました。コンディションも日ごとによくなっていたので、セットを戻して行きました。ちょっとしたアジャストだったのでライディングに集中できましたし、エンジンやマッピングを煮詰めることもできていましたので、応援してくださっている皆さんのためにも結果で応えたかったのですが…。来シーズンも走るチャンスがあれば全力を尽くします。多くの応援ありがとうございました」
手島雄介代表コメント
「日本郵便さん、HONDAさんを始め関わってくださったすべての方に感謝いたします。去年の最終戦での出来事から今日まで一年、自分たちが何をやるべきかを、ライダー、チームスタッフ、それぞれが考えて行動したことがシリーズチャンピオンという結果を生んでくれました。小山知良を始め、スタッフの頑張りと努力に感謝という言葉しかないです。
個人的な話かもしれませんが、ライダーとして2009年にチャンピオンを獲得させて頂き、ちょうど10年の今年、チームとしてチャンピオンを取らせて頂いた事に幸せを感じますし、チームで取った方が100倍嬉しかったですね。
今シーズン全日本ST600クラスで頂点に立ったということを、さらに世の中に知ってもらい活用していただけるように、引き続き日本郵便さんと皆様と一緒に頑張って行きたいと思っています。多くのご協力とご声援、本当にありがとうございました。」
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